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マクラーレン720Sスパイダーを米国で乗る

マクラーレン・オートモーティブは、2019年初頭にオープンエアの爽快感を持つスーパーシリーズ「720Sスパイダー」を発表した。試乗場所は米国フェニックスだ。

720Sクーペのオープントップ版マクラーレン720Sスパイダーは2019年1月に日本でも発表され話題を呼んでいる。ベースになっているのは2017年5月に発表されたマクラーレン720Sで、最高出力は720馬力という超ド級のパワーを誇る。

フェニックスのスコッツデールにあるゴルフリゾートで、720Sスパイダーと対面した。最初に印象に残ったのは、クーペの印象を崩さずオープン化したデザイナーの手腕である。

真横からだとクーペにも見える。「バットレス」(建築用語の壁の一種)と呼ばれるリアクォーターパネルのせいだ。おぼているひとがいるかどうか分からないが、1970年代のランチア・モンテカルロを彷彿させるではないか。

720Sスパイダーの場合は、ただし、このクォーターパネルにしっかり機能をもたせている。ミドシップのエンジンルームへ効率的に冷却気をとりこむ構造になっているのだ。

乗りこむとしっかりフルオープンの気分が味わえる。年間降雨量がごく少ないフェニックスの青い空を楽しめた。いっぽうでガラスルーフ自体にエレクトロクロミック機能というのが用意されており、室内のボタンで濃度が変えられる。

ほとんど透明からかなりダークまで光線の透過率が選べる。オープンにしなくてもオープンの機能を味わうことだって可能なのだ。凝っているといえば、やはりシャシーである。メインシャシーはクーペと同様、炭素樹脂製「モノケージⅡ-S」だ。

髙剛性と軽量がセリングポイントで、しかもAピラーまで一体成型。なので、強度を確保しつつぎりぎりまで細くすることが出来る。より広い視界の確保を可能にしているのだ。

このシャシーゆえ、オープン化にあたっても追加補強は必要なかったと、フェニックスを訪れていたマクラーレン・オートモーティブのエンジニアは言う。わずか11秒で開閉というハードトップは8つのモーターを使うが、重量増加は49キロにとどまっている。

最近のオープンスポーツカーはソフトトップを選ぶ傾向だが、マクラーレンはあえてハードトップ型のオープンとした。その理由を尋ねると、「ウィンドノイズとセキュリティを考えて」という答えだった。

650Sスパイダーのトップを流用することもあえてせず、最高のオープントップスパイダー開発を目指したそうだ。エンジンは4リッターV8ツインターボである。マクラーレンのラインナップにあっては中間のスーパーシリーズに属する。

中間といっても、ほぼサーキット志向だ。スポーツシリーズは”街乗りも出来る”快適性も持ち合わせているが、スーパーシリーズはよりシャープな運動性能を特徴としている。

米国での試乗コースは一般道と、それにマウンテンロードだった。両側にサグアロという背の高いサボテンが生えた独特の景色のなか、やはりデザイン性は高いといっても、希少価値ゆえ、見慣れないスタイルの720Sスパイダーが行くのは、日本から訪れた私の眼には地球上の光景ではない気がしたほどだ。

720馬力というのはおそろしいほどのハイパワーだが、じつはドライバー一体化しているドライブ感覚なので、ジェットコースターにほおりこまれたような、ドキドキ感はない。加速も減速も操舵もごくわずかな手足の動きで充分。しかも安定している。

720Sスパイダーは高い操縦安定性を持つ。しかも今回、驚かされたのは、砂利だらけの荒れた路面のワインディングロードで速度が上がっても、まったく不安感がなかったことだ。

サスペンション・スプリングは硬めだが、ダンパーはオールマイティだ。感心したのはリバウンド側の収束性で、荒れた路面の影響を受けて跳ねることもなく、地面に吸いつくように走るのである。

ドライブセレクターは「コンフォート」「スポーツ」「トラック(サーキット」の切り替え式だ。加えて「アクティブ」ボタンがあり、これにより足回りの設定が変えられる。

スポーツモードでは、ギアシフトのタイミングが早まる。このとき、シフトアップの際にイグニッションのスパークをカットして、スムーズで素早いシフトを可能にしている。まさにサーキットを走るために作られたクルマだ。

トラックモードには、マクラーレンが「イナーシャ・プッシュ」と呼ぶ運動エネルギー回生システムも用意されている。ブレーキング時のエネルギーを貯め、次のギアにエンゲージした際に、それを使ってトルクを上乗せするのだ。

マクラーレンでは、ドライブを楽しむことも大事です、と言う。実際にさきに触れたようにクローズドでもオープンの走行感をすこし味わえるし、インテリアの作りはいい。

前ヒンジで上にはねあがるディヒドラルドアゆえ乗降性はよく、人間工学の究極とはこういうものかと感心させられる。日本での価格は3788万8000円だ。これだけの価格帯で、しかも700馬力を超えるハイパワーを誇るライバルはなかなかいない。

出力からいうと、800cv(588kW)の6496ccV12エンジンをフロントに搭載した「フェラーリ812スーパーファスト」(3910万円)が思い浮かぶ。720Sスパイダーはちょっと類のないモデルなのだ。

3994ccのV8ツインターボユニットの最高出力は720ps(530kW)@7500rpm、最大トルクは770Nm@5500-6500rpm


『バットレス』(リアクォーターパネル)の側面からエアをエンジンルームに導入する設計


全長4544ミリ、全幅1930ミリ、全高1194ミリで、車重は1332キロ


ルーフには光線透過率を30%から95パーセントまで変えられる「エレクトロクロミック・ガラス」採用


コクピットは機能的であり、かつ仕上げは上質

小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。読者の方がたの興味に合致しそうな”いいクルマ”の世界を紹介していきたい。

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