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ベントレー・ミュルザンヌ・スピード

絶滅危惧種がクルマの世界にもあるとしたら、大排気量エンジン搭載車かもしれない。6.75リッターV8エンジンを搭載した英国の「ベントレー・ミュルザンヌ・スピード」も、いまのうちに乗ったほうがいい貴重なセダンである。

特徴をひとことでいうと、後席も前席も気持いいクルマだ。大きな車体と大きな排気量の組み合わせを堪能させてくれるモデルといえば、英国にはロールスロイスがあるが、ベントレーのほうがドライバーカーとしては際立っている。

なにしろ、全長5.6メートルの車体にもかかわらず、クルマを意のままに走らせることが出来るのだ。1100Nmの太いトルクが1750rpmの低回転域で発生するので、アクセルペダルに爪先で触れるだけでも、力強い加速が味わえるほどだ。

ステアリングもセンシブルで、微妙な領域での反応にすぐれる。2.7トンと重量級の車体を太いトルクで動かすのが、ミュルザンヌ独特の”味”なのだが、ドライビングの楽しさがある。

強力なブレーキをそなえているので、速度をあげてコーナリングをしても、それもまた楽しい。地面に張り付く感覚とは違うが、操作する楽しさがあるのだ。70年代からのベントレーセダン独特のフィーリングが継承されている。

この「スピード」とはミュルザンヌのシリーズにおける高性能版だ。ミュルザンヌの最高出力が377kW(512ps)であるのに対して、ミュルザンヌ・スピードは395kW(537ps)とあきらかにパワフルだ。

1920年代に「3リッター」と呼ばれるモデルに、大径カーブレターを装着してパワーを上げた「スピード」を設定していらい、ベントレーが折りに触れて使うサブネームである。

おもしろいのは、それがショファードリブン(運転手つき)のミュルザンヌにまで設定されていることだ。大きい、優雅、そして速い、というのがベントレーの価値なのである。

レザーで張られたダッシュボードに、英国人がやたらこだわる美しい木目のウッドパネルが張られ、そこにクロームで縁取られた計器と操作類が並ぶ。感触も金属に見えるものは金属の手ざわりだし、操作感も気持がいい。

その世界で太いトルクに”乗った”感覚で走らせていると、こんな快適なドライブが出来るモデルはそうそうないと、感慨が湧いているほどだ。メルセデス・ベンツSクラスやBMW7シリーズはもっと軽いし、ロールスロイスはどちからというと重厚よりだ。

大排気量エンジンのキャラクターを活かしたミュルザンヌ・スピードならでのドライブ体験は、おそらく、そう遠くない将来、味わえなくなる可能性だってある。欧州委員会による排ガス規制が2020年からいっそう厳しくなるので、そのあたりでハイブリッド化などが視野に入っているかもしれない。

ミュルザンヌ・スピードの世界をちょっとでも味わうと、かりにスポーツカー好きだって、SUVファンだって、絶対に忘れられないものとなる。それだけ濃い魅力があるのだ。

6752ccのV8ターボエンジンに後輪駆動の組合せ(3873万9600円)


全長5575ミリ、全幅1925ミリ(ミラーを開いた状態)、全高1530ミリ

 


ウッドパネルに輝くクロームで縁取られた計器が並ぶベントレーの伝統的なデザインテーマが継承されている

 


3270ミリもあるホイールベースの恩恵でたっぷりしたスペースと贅沢な雰囲気の後席

 


内装も(外板色同様)オーダーできる範囲が広い

 


ドアには凝ったベントレーのオーナーメントがはめこまれている

 


ベントレーの頭文字をモチーフにしたライトのデザイン

 

クルマだ。一翼にはロールスロイスもあるが、ベントレーのほうがドライバーを意識した設定だ。ミュルサンヌはそもそもベントレー最高峰のセダンという位置づけだが、高性能モデルがちゃんとある。

スピードの名は1920年代までさかのぼる。当時の「3リッター」という

小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。読者の方がたの興味に合致しそうな”いいクルマ”の世界を紹介していきたい。

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