アウディA6試乗記

セダンのボディサイズは全長4950ミリ、全幅1885ミリ、全高1430ミリ(アバントでは全高が1465ミリ)

世には高級セダンがいろいろある。なにをもって高級とするかは、オーナーの決めるところだが、アウディの新型A6は、運転感覚を”高級”と呼びたい出来のよさだ。A6は、セダンとステーションワゴン(アウディではアバントと呼称)と2つのボディタイプで、2019年3月に同時発売された。

まず導入されたのは、3リッターV6エンジンにクワトロシステムを組み合わせたA6 Sedan 55 TFSI quattro S lineとA6 Avant 55 TFSI quattro S lineだ。基本プラットフォームはA8およびA7スポーツバックと共用で、ホイールベースは全車共通の2925ミリだ。全長はA7スポーツバックよりA6(両方のボディ形式ともに)25ミリ短く4950ミリとなる。

デザインテーマは従来より引き継いだもので、とくにアバントはルーフの前後長をわざと短めにしてリアゲートを寝かせ、スタイリッシュさを演出するという初代からのコンセプトが引き継がれている。250kW(340ps)の最高出力と500Nmの最大トルクを持つエンジンは、力がある。ダッシュもいいし、ハイウェイなどでの中間加速にもすぐれる。

アクセルペダルの踏み込みに対して、気持よく反応するのだ。同時に、新型A6には「ドライビングパッケージ」というオプションが用意されている。試乗したクルマで体験したが、ひとことでいうと、気持のいいハンドリングをもたらしてくれる。

「ドライビングパッケージ」の内容は、「オールホイールステアリング」と「ダンピングコントロールサスペンション」と「ダイナミックステアリング」を統合したものだ。「オールホイールステアリング」は、ステアリングホイールを切った角度に合わせて後輪に舵角をつける。

低速では逆位相に後輪を動かすことで回転半径をコンパクトにし、いっぽう高速では同位相に動かすことで仮想ホイールベースが長くなり、車両の安定性が増す。かつレーンチェンジがスムーズに行えるのだ。車両の挙動に合わせてサスペンションのダンピングを電子制御して安定性を向上させるのが「ダンピングコントロールサスペンション」で、回す速度や切れ角に合わせて舵角を調整するのが「ダイナミックステアリング」だ。

はたしてA6はセダンもアバントも、パワフルなだけでなく、クルマを意のままに走らせられる感覚が充分に味わえる。全長が4950ミリもあり、後席もかなり余裕あるクルマなのだが、自分で運転するのが最高、という楽しみを提供してくれるのだ。

アウディの看板技術であるクワトロシステムも、燃費を重視したものとなっている。負荷の少ない高速などではセンターデフ制御で後輪への動力伝達は行わない。さらに、エンジンとドライブトレインを切り離してアイドリングで走行する。いっぽう、カメラなどで前方路面に四輪駆動を必要とする状況を検知すると、約0.3秒でクラッチがつながり後輪にも適切なトルクが配分される。

車輪が滑るなどしてから4WDになるのでなく、事前にスタンバイする。それが安全なのだとアウディでは謳う。インテリア各部の質感が高いのも魅力的で、ドアの開閉、ウィンドウの上げ下げ、コントロール類やウィンカーレバーのクリック感など、あらゆる細部にいたるまで神経が行き届いている。これはアウディならではの品質感だ。

新しいのは、スイッチ類を極力減らして、モニタースクリーンで操作できるようにした「MMIタッチレスポンス」の採用だ。2つのモニタースクリーンを指で操作し、空調やインフォテイメントシステムなど、多くの機能を操る。価格は「A6 Sedan 55 TFSI quattro S line」は1006万円、ステーションワゴンの「A6 Avant 55 TFSI quattro S lineは1041万円となる。

追って4気筒エンジンやディーゼルエンジンのモデルもラインナップに加わるという。

2994ccV型6気筒エンジンは最高出力250kW(340ps)@5200~6400rpm、最大トルク500Nm@1370~4500rpm

 

アバントの荷室は後席を立てたままの状態で565リットル

 

ダッシュボードはブラックパネルにアルミニウムのトリムが美しい(写真はS line)

 

スマートフォンのように直感的な操作ができると謳われるTFT液晶画面を並べた「MMIタッチレスポンス」

 

ホイールベースは2925ミリと長く後席は先代より広くなっている

 

数値から期待できるパワフルな感をしっかり持ち、広い速度域で中間加速にすぐれる。アクセルペダルを軽く踏み込むと、すーっと前に出ていく。加速感はスムーズ。抽象的にいうと、品がいい、と表現したくなる。スポーティさを前面に押しだしていないセダンあるいはステーションワゴンという、伝統的な車型のA6によく合っていると思えた。

ドライビングの気持よさに不可欠なレーンチェンジのスムーズさも特筆ものだ。空力ボディとともに、48ボルトの補助バッテリーを使った(38万円のオプション)のおかげもあるだろう。

小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。読者の方がたの興味に合致しそうな”いいクルマ”の世界を紹介していきたい。

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