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尾鷲の奇祭に俄かヤーヤ衆で参戦。ついでに熊野の世界遺産を巡る旅。

十津川を抜け、川湯温泉を楽しみながら尾鷲を目指す。

大阪・ミナミの宗右衛門町。いきつけのバー。そこで仲良くなったのが「まんぼうの家」という料理屋の大将、浜ちゃんだ。三重県の尾鷲市出身で、2月のヤーヤ祭りという奇祭には毎年帰郷して参加しており、昨年からは気心の知れた飲食店のマスターやママたちも同行させてもらっているという。

前後に温泉や熊野三山も寄り道するというので参加を即決。当日を迎えた。

ミナミに集合し、車で奈良県五條市から紀伊半島を縦断する。途中、日本有数の長さを誇る十津川村の谷瀬の吊り橋でスリルと景色を味わい、吉野から熊野にかけての山深さに歴史を重ねて感動しながら川湯温泉へ。

「みどりや」の日帰り入浴は、湯浴み着を纏(まと)って河原へ出れば男女混浴が恥ずかしくなく楽しめ、グループ旅行には最適だった。

300年の伝統を誇る荒々しい祭りに野地町のヤーヤ衆として参戦。

ゆっくりし過ぎたため、夕方ぎりぎりになって尾鷲に到着。浜ちゃんが尾鷲時代に働いていた料理店、「鬼瓦」でキレキレの刺身定食をいただき、快く受け入れていただいた野地町の梼屋(とうや)へ。名物のめはり寿司やおにぎり、干物やお酒が用意されている。

ごあいさつをして、準備してきた装束に着替える。すると「大阪の人は何人跳ぶんや?」という話に。当初は浜ちゃんを含む私たち男4人のうち、去年も参加した屈強とぽっちゃりのペルー人マスター2人が跳ぶ=全裸で2月の夜の海に跳び込む、という話だったが、人数に余裕があるので全員跳べるとのこと。

そこで浜ちゃんが「じゃー、僕も」となり、流れで私も跳ぶことに。目印である紫の帯を腰に巻き付けた。

そもそもヤーヤ祭りは、300年以上続く尾鷲神社の祭りで、2月1日から5日まで開催される。私たちが参加したのは宵宮にあたる3日の夜。上下白・黒い地下足袋に身を包んだヤーヤ衆が市街地の狭い路地で押しくらまんじゅうをする。

勇壮なリズムで太鼓が打ち鳴らされ、「チョーサじゃ」の掛け声と共に、縦2列になったヤーヤ衆がぶつかり合って、押し込んだ方が勝ち。これを「練り」という。激突したあとは2列がキープできず、かなり広範囲な押し合いになる。

会場の両側には頑丈な木の囲いが設けてあり、さながらリングのようだ。当然、けんかやけが防止には策が講じられており、中に入るときには両手を万歳することがルール。危ない兆候があるとすぐに終了の鐘が振られる。

同じ相手と複数回練り、少し休んで、対戦相手が代わって、と続いていく。4回目くらいの練りのときに不覚にも中心部に巻き込まれ、息ができず、背骨がきしみ、肋骨に痛みが走った。

将棋倒し事故のニュースを見たことはあるが、実際に人に押される怖さを味わうのは始めてだった。そこからは、少し遠慮気味に肋骨の痛みをかばいながら参加することになった。トーナメントでなく、勝率を記録するでもない。ただ、熱いぶつかり合いが続く。

真冬の夜の海に全裸で跳び込んで身を清めると気合いが全身に漲った。

かれこれ10数回は練っただろうか。練りは終わり、次は夜の街中をぐるぐると巡り漁港へ向かう。町は静まり返っている。その静寂の中に「チョーサじゃ」の掛け声が響く。提灯を掲げ、法螺貝と小太鼓も鳴らされる。

港では海で身を清める=垢離掻き(こりかき)が行われる。簡易な脱衣場所で一気にすべてを脱ぎ、ペットボルトの水を頭からかぶる。準備が整い入口の布が開けられると、両側に提灯が並び、花道のように通り道を照らしている。

全裸で足早に前へと進む。30mほど先は岸壁、真っ黒な海だ。選ばれた訳でもないが、選ばれし者の気分になる。もしくは、いけにえとして執行を待つような気分も混ざる。激しく太鼓や法螺貝が鳴り、気合いも乗ってくる。一人ずつ3mほどの高さの岸壁から2月の夜の海へ跳ぶ。

身体が大きく沈み、泡の音だけが支配する静寂となる。海中で目を開けると泡が上がっていく先の水面にライトの灯りが揺らめいている。身体が浮かび上がってくるまで時間がスローモーションのようにとても長く感じられた。

海面に顔を出すと、全員が揃うまで立ち泳ぎをして待ち、柏手を打つ。終わると1人ずつはしごをよじ登って脱衣所まで戻る。海中にいたのは1~2分程度だと思うが、意外なことに、気持ちよかった。

相当の覚悟を決めて跳んだのだが、もう少し海に浸っていたかったくらいだ。身体を拭くとさっぱりとして海水独特のベトベトつきもない。身体は冷たいが、味わったことのない爽快感・達成感が脳に突き刺さっていた。

その後は尾鷲神社でお祓いを受け、再度、練り会場で練り直し。疲れ切ってはいるが妙に頭の冴えたハイな状態で野地町の梼屋へ戻った。

本来、垢離掻きは町ごとに選ばれた人だけが跳べる名誉な役回りだった。ただ、お世話になった野地町のように知り合いがいるような場合、練りのヤーヤ衆も含めて、他所者に対して参加を認めてくれる町も多くなったそうだ。

逆に世帯数が少なく、垢離掻きできる人が少ない町では人数を揃えるために他町にお願いして人を確保することもあるという。

太平洋に突き出し、山深い熊野は神話が似合う豊穣の地だった。

都会育ちの筆者にとっては、この夜の体験は本当に不思議なものだった。翌朝、尾鷲を後にする前に、昨日の会場や漁港、尾鷲神社などを散歩してみた。

またその日の夜も祭りが続くのだが、町は夜の魔法が解けたかのように平静そのもので、所々に掲げられた横断幕がなければ祭りの期間中だとわからないほどだ。しかし、過度に観光化された祭りが多くなる中、地域にしっかり支えられた祭り本来の姿を、ヤーヤ祭りに見る思いがした。

帰路は浜ちゃんの案内で世界遺産になっている獅子巌、花の窟神社、熊野速玉大社、熊野那智大社、熊野本宮大社を巡った、昼食は勝浦の有名店「竹原」で、お店の方とも仲良くなってマグロ料理を堪能。最後に湯の峰温泉の公衆薬湯に浸かって疲れを抜いてから大阪へと戻った。

体力的にはハードな2日間だったが、来年も参加を誓ったのは言うまでもない。

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