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-ラグビー文化-

ラグビーの魅力は、試合自体や選手のみならず、その独特な文化にあると思います。例えば、“ノーサイドの精神”という言葉を一般用語としても耳にしたことがあると思います。これは、本来、試合中は激しく戦うが、試合が終われば同じラグビーの仲間であり、敵味方はありませんという意味です。ラグビーの正式な試合では、試合後にレセプションを行い、両チームが酒を酌み交わし、お互いに健闘を讃え合うというのが古くからの習わしです。

ラグビー発祥の英国では元々ゲーム終了のことをノーサイドと言っていたらしいですが、今では殆ど使用されることはない言葉になってしまっているようです。その昔の言葉が極東の日本でゲーム終了の意味として今でも大事に使われているのは非常に興味深いことだと思います。英連邦やフランスでは、ノーサイド精神が浸透しているので、言葉を使う意味すら無くなってしまったのかもしれませんね。一方、観戦者やファンのマナーの良さやマインドもラグビー文化の良さの一面です。

観客は相手チームにも最大限のリスペクトを持ち、良いプレーには敵味方関係無く賞賛するというのが習わしです。特に座席は応援しているチームに関係無く一緒に座っているので、試合が終われば観客もお互いに相手の支持するチームを称え合うというのが伝統的なラグビーの風景なのです。ノーサイドの精神がプレイヤーだけではなく、観客にも浸透しているということです。ゴールキックを狙う時等は、丁度ゴルフのパターを打つ時と同じように会場全体が静まりかえります。

只、残念ながら、ラグビーが様々な国へと普及し発展していく過程で、伝統的なラグビーの良き文化が失われつつある懸念もあります。是非この良き文化を新たにラグビーに興味を持った人々にも広く伝えていきたいものです。何故、ラグビーはこのような文化を形成したのでしょうか。それには、少し時代を遡り考察したいと思います。

1800年代の英国パブリックスクール(中・上流階級の子息が通う私立学)に於いて盛んに行われたフットボール(原始フットボール)という競技がありました。この競技が現在のサッカーとラグビーの直接のルーツであり、この二つは元々同じスポーツであり、それが枝分かれしたのです。当時パブリックスクールで盛んに行われていたフットボールは、学校毎に独自ルールがあり、試合毎にルールを調整する必要がありました。そんな折、1863年に12のクラブが集まり、ルールの統一化を図ることにしました。

これが、近代サッカーの原型が誕生した瞬間なのです。(現時点のサッカーとは随分ルールが違い、ボールを手で掴むことが出来たり、ボールは前にパスすることが禁止されていたり、現在のラグビーに通ずるものがあります)しかし、ボールを持って走ること等を禁止することに同意出来ないラグビー校を中心としたグループが脱退し袂を分けたのです。そして、このラグビー校を中心としたグループが1871年にラグビー協会を設立し、正式にラグビーという競技が誕生したのです。

しかし、当時実際に行われていたフットボールは、まだサッカールールとラグビールールが完璧に整備され区別されておらず、前後半で違うルールで試合を行うことも多々あったようです。一方、元々パブリックスクールの子息を鍛錬する為の競技であったフットボールが、産業革命による鉄道の整備でどんどんと競技者に拡がりをみせます。そして、労働者階級がフットボールを盛んに行うことになりました。

しかし、怪我によって働くことが出来なくなることを恐れた労働者階級が、怪我のリスクが高いラグビールールでのプレーを避け、サッカールールをどんどん採用したことが、サッカーが急速に普及し大衆化していく大きな要因の一つになったようです。(勿論、ルールが分かりやすい、ボールが1個あれば楽しめる等他の要因も多々ありましたが)結果、サッカーは大衆のスポーツとして世界中に普及し、現在のような世界で最も人気のあるスポーツになったのです。

一方、ラグビーはパブリックスクールやその卒業生を中心とした中流階級以上の知的階級が、プレーをしたり観戦したりするスポーツとして、英連邦を中心に発展していったのです。ラグビー協会は1995年まで“アマチュア宣言”という御旗を掲げ、ラグビーでお金を稼ぐことを禁止していました。ある意味、長い間ラグビーというスポーツは、英国紳士的発想の精神・肉体の鍛錬の場であり、社交の場であったのです。これが、ラグビーが独特な文化を育んだ背景です。

1987年に開催された第一回ラグビーワールドカップの時点ではプロはまだ容認されておらず、本業は医者や弁護士といった選手が多々おり、非常に牧歌的な風景の大会でした。しかし、時代の要請により1995年についにプロが容認され、ラグビーも急速に変化を遂げ、現在に至るのです。前述した通り、ラグビーというスポーツがどんどん進化・発展し、より多くの国で親しまれ、プレーしたり観戦したりする人が増えることは大歓迎で喜ばしいことです。只、同時にラグビーが長い間育んできた独自の良い文化の継承・普及もして欲しいというのがラグビーを心から愛する私の願いです。

最後に、2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップでは、日本代表と共に、観客である我々自身が流石日本は凄いと世界から尊敬されるような存在になれることを願います!

ライター:中路由人(なかじゆうと)

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