【安土忠久さんのへちかんだグラス】

ずいぶん前の話しだけれど、箱根に旅行に行った時に立ち寄ったお菓子屋さんのカフェ スペースでそれに出会った。席に座り出された水に口をつけた瞬間、衝撃が走った。とても柔らかい口当たりに水の注がれた其のグラスに釘付けになってしまった…

外観は少しゆがんでいていびつな形をしているが、ガラス質は独特のなめらかさを保っていて窓ガラスのような平坦な冷たさとは正反対の風合いがあった。何よりも唇に触れる部分の絶妙な厚みと丸さが心地良く、今まで使ってきたグラスの概念さえ吹っ飛んでしまうほどに感動した。

すぐに店員さんに確認して、それが安土さんの作品だとわかった。安土さんは飛騨で吹きガラス作家をされており「へちかんだグラス」と言うグラスを生み出している。「へちかんだ」とは飛騨弁で「ゆがんだ」を意味するもの。

日常的に使う物にほんの少し贅沢な物を使うだけで、本当に贅沢な気分を味わえる。なにげない日常の一コマが華やかになり、毎日を楽しく過ごせると思う。そういう事を感じさせてくれた食器のひとつだ。作家ものの食器は当然ながら、作家自身が投影されていると思う。

人の手から生み出される物に私たちは心惹かれ愛着を持って接し、慈しむ。古来より受け継がれる名品たちも数多くの人に愛され現代にある。先人たちに感謝をしながら、私たちも日常食器に拘りを持って暮らしてゆけたらと思う。

【HIDA COLLECTION】
http://www.hidacolle.com/product-category/glass/安土忠久/

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